ミュージカル「鉄鼠の檻」を観てきました

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わたくしの愛する小西遼生さん主演の、百鬼夜行シリーズ第2弾「ミュージカル鉄鼠の檻」を観てきました。

イッツフォーリーズの百鬼夜行シリーズ第1弾「ミュージカル魍魎の匣」の感想記事はこちら

匣に引き続きもう本当に、あの原作をよくぞ・・・よくぞこんな風に作りましたよね~!

脚本・演出の板垣さんにはねぎらいと共に、遼生ファンとしてお礼状を書きたい。いやホントに。

話の面白さ、情報量の膨大さは原作者・京極夏彦先生のものですが、それをミュージカルとして仕立てた見事さに感服します!


山中に埋まった蔵に詰まった古本の鑑定に呼ばれた古本屋「京極堂」こと中禅寺と友人の小説家・関口は、謎の禅寺・明慧寺での僧侶連続殺人事件にかかわることになる。

明慧寺は禅寺ではあるが特定宗派のものではないという。さらに檀家もない。どうやって寺は維持されているのか。最初の被害者・小坂了稔が売ろうとした「世に出ることのなき神品」とは何だったのか。

謎が深まるなか、次々と僧侶は殺され、遺体には意味不明な細工が施されていく──


どんな話なの?って聞かれたら、つい「禅の話」って答えちゃいそうになるくらい、禅についてのレクチャーが続きますが、そうではないw

そうではないんだけど、じっっっくりと「禅とはどういうものなのか」を説明してくれるおかげで、犯人が僧侶を殺した心理が少しは理解できるというか。

「ああなるほど、自分は到達しない境地に至ったことが妬ましく、また『自分だったら到達した瞬間に死にたい』という思いがあったから、そうしたのね」

って思える。いやだからって殺すなよとは思うけども。

僧侶が歌う数々のカッコいい音楽が、耳に残ってもう~回るまわる。

歌う人それぞれのキーにバッチリ合ってるとみえて、聴いてて本当に気持ちいい。歌ってるほうもさぞ気持ちいいんじゃないですかね~。

どの曲も好きだけど、特に禅寺の組織について説明するのと、常信和尚が祐賢和尚に「ともに山を下りませぬか」と語る曲。

あとは京極堂の憑き物落とし曲ね。

常信和尚を落とす時のも、ラストのクライマックスのもすっごく好きだ~!

遼生さんの声が大好きなわたくしとしては、いちいち身もだえしそうになるほどいいですw

声といえば歌声じゃないけど、入門を乞う決まり文句がめっちゃキマってて萌えたぎったよね


「わかる」ってなんなんだろうね。

知るとわかるは違うと思うし、自分自身「知ってる」ことは数多くあれど、何かについて本当に「わかってる」ことなんて何ひとつないのでは?って考えはじめちゃう。でも一方では

「わかろうとしてはいけない、もうわかっている」

それがすべて真理という気もします。


鉄鼠の檻とは関係ない話だけど、私は10代から20代前半にかけて、名前を出せば誰でも知ってる宗教団体に属し、なかなか精力的に活動してたのね。

その団体では、教義を広めるのはお坊様ではなく、信者である自分たちで、広くたくさんの人々を仲間にすることが何よりの功徳とされてたの。

そういう感じだから、人によっては強引な勧誘をしたり、宗教団体の集会であることを明かさずに人を連れてきてトラブったりすることもあったのよ。

で、ある日思っちゃったんですよ。

「自分が功徳を受けたくて、どんな人にでも教義を広める」ってヘンな話じゃない?って。

教会にしろ、神社仏閣にしろ、深部はともかく入口は広く開かれてて、たいがい誰でも入れるじゃないですか。

それはなにか、自分自身や周囲の人では解決できない悩みや苦しみを抱えた人を迎え入れるために、そうしていると思うんです。

どうしていいかわからない、この苦しみはなに由来なのかが判然としない、そういうものを抱えた人が光を求めて、能動的にたどり着く救いが宗教、というか「信仰」ではないのかと。

今べつに助けてほしいわけでもない人に、「これがいいから信じるといいよ、私にも良いリターンがあるし!」って勧めるものなのか?

そんな疑念がわいて、いろんな方に聞いてみたんですよ。

でもその時わたしの周りにいた信徒の方々は、「疑わず信じろ」というだけだった。

私の精神性はまず疑うことで成り立っているので(笑)それは受け入れがたく、結局信仰から離れたんです。

結果、離れて良かったんだなと思ってますけど、もしあの時、私が納得できる答をくれる人がいたら、今でも信仰してたかもしれないですねぇ。


もうひとつ、作品と直接は関係ない話ですけど、憑き物落としってコーチングみたいだなって思いました。

コーチングとは目的達成のために必要な思考・行動を促すもので、リーダーやマネージャー育成の場でよく使われます。

蛇足ですけどトレーニングとコーチングの違いは「団体」か「個別」かってとこなんですよね。

トレーニングは「train」つまり列車で、コンテナにたくさん人を乗せて決められた道(マニュアル)を進み、一定の場所(水準)まで到達させるもの。

トレーニングを行う側は正解も到達点も知っていて、受ける側がトレーナーの水準を超えることはないのね。

対してコーチングは「coach」つまり馬車。人を個別に、その人の望むところまで運ぶもの。

コーチは答えを持っていないし、受ける側がどこまで到達するのかわからない。答えは常にコーチングを受ける側が持っていて、コーチの問いからそれを表に出すだけなの。

ね、コーチングと憑き物落とし、なんだか似てるでしょう?

昔の仕事でよくやったけど、あれは憑き物落としだったんだなぁって今、思ってる(笑)


了稔和尚は自分が規格外であり続けるために、規格でくくられた場所を作った。

そのことで悟りは開けたかもしれないけど、大勢の人の時間を自分の都合で消費してはいかんよね。

殺されるこたぁねぇだろとは思いますがまぁ自業自得。

それに比べて他の和尚様たちは不憫・・・気の毒すぎる。


キャストさんたちについて少し。

わたくしは遼生狂いなので、彼がどんな役を演ってくれても喜んじゃうんですけど、京極堂はね~

もうもう本当に、板垣さんありがとう!!(超大声)

当たり役とはこういうのをいうのね・・・と喜びの涙を流してますよ。気難しそうな風貌、和服の立ち姿、裾がバタつかない足運び、複雑に響く歌声、もう永遠に褒めどころを数え上げられる!

遼生をキャスティングしてくれてありがとうありがとう(拝

匣ミュの時も終盤、歌いっぱなし張りつめっぱなしだったけど、檻ミュはさらにスゴくて、

どうよ私の推しは!すっごいイイでしょう?!

って全方位に威張り散らかしたい(※単なるいちファンです

偏屈で仏頂面だけど、人の弱さや脆さに包容力のある京極堂で、とってもステキでした。

もう一作、遼生さん主演でつくって欲しいよね~


榎木津役は今回Wキャストでした。続投の北村諒さんは相変わらず華やかでトリッキー。毎回なにをしだすかわからなくて、かなり笑わせてもらいましたw

はじめましての横田龍儀さんはお顔がツヤッツヤして赤ちゃんみたい。ある意味純粋無垢な榎木津にピッタリでした。

関口役の神澤直也さん、匣ミュの時より歌も芝居もうまくなったと感じて、身内でもないのに喜んだよ(笑)今回はストーリーテラーで物語の進行役を務めており、出たり引っ込んだり、会話に参加したり傍から説明を入れたりとタイミングが難しそうなのにスムーズでした。

相変わらず病的に内気、には見えませんw

慈行役の上田堪大さんはミュージカル北斗の拳ぶりでした。シンも良かったけど、今回もっと良かったですねぇ。慇懃な態度、にこりともしない表情と、ただものではない感。それだけに鈴の出現にビビり倒したり、ラストの大爆発がすっごい刺さります。

あと罰策を受けるときにクッと首を倒すの色っぽいよね ←

匣ミュの時は鳥口役の大川永さんが大活躍!って感じでしたが、今回は敦子役の宮田佳奈さんが印象的でした。大川さんとのバディぶりが良かったです。おふたりの歌声もステキでしたん。

哲童役の小波津亜廉さん、第一印象が「デカいな」。原作のイメージよりだいぶイケメンw

ずっと公案を考えているのは、自分が存在する意味、理由について答えが欲しいのかもしれない。

そういや檻ミュでは使われませんでしたが、ラスト近くに発する「師よ、いづこへ」は聞きたかったな!

泰全老師の森さんは飄々としつつ懐の深い僧侶を演じられてました。禅と芸術のかかわりを紐解く場面、よかったですね。

待古庵役がキレイなお顔の小原さんだったのがちょっと意外w泰全老師との会話で開眼するシーンは、ちょっとジーンときました。

美にかかわる人が抱く、「美を作り出す」ことへの憧れと羨望って、ただ消費する立場の私たちとは少し違うのかもしれませんね。


さてそして、前から存じ上げてましたが今回やられた!と思ったのが松原剛志さんと畠中洋さん。

常信和尚を演じた松原さんは本物の僧侶にしか見えないよ?!在り方、発語、表情や人に顔を向ける所作など、もうほんとに高潔な僧侶にしか見えません。歌声もすごくステキ!ほれぼれしました。

明慧寺近くに住む老人、仁秀役の畠中さんはまろやかな歌声で、不気味さより高潔さを感じました。ホントにすごい年寄りに見えるの凄いよねw

優し気な雰囲気もとてもよく。この役に畠中さんをチョイスした板垣さんには、やはりお礼状を書かねばならぬ。


ひっさしぶりにブログ書いたと思ったらむやみに長いw

檻ミュはこの週末(2024年6月28日・29日)大阪公演がまだあり、東京公演の配信はPIA LIVE STREAMで2024年7月15日まで観られます。

すっっごいのでぜひ観てほしい~

配信期間が長いのもありがたいですね。私もまだまだ楽しみたいと思います♪

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