舞台「スルース~探偵~」を観てきました

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吉田鋼太郎さんと柿澤勇人さんのふたり芝居「スルース~探偵~」を観てきました。

この作品、すごく昔から何度も上演されてるんだそうですね。マイケル・ケインとジュード・ロウの映画も人気が高いとか。実は未見なんですが。

私は2016年に上演された、西岡德馬さんと新納慎也さん・音尾琢真さんの舞台が初見でございました。

お話がもう面白くて!あれを鋼太郎さんとカッキーでやるなら、観るしかないと鼻息荒く出かけて参りました。いや良かった・・・!

あらすじ

著名な推理小説家で大富豪のアンドリュー・ワイク(吉田鋼太郎さん)が自宅で執筆していると、マイロ・ティンドル(柿澤勇人さん)が招待に応じ訪ねてくる。
実はマイロはアンドリューの妻の浮気相手。それを責められるものだと覚悟していたマイロに、ワイクはある計画を持ちかける。
妻への愛はもうない、自分にも愛人がいる。しかし君には財産がなく、浪費家の妻が君を見限って戻ってきてしまうと困る。ついては、自宅の金庫に保管されている高価な宝石を盗み、売り払えと提案する。
そうすることで、マイロはアンドリューの妻と大金を手に入れることができ、アンドリューは宝石にかけた多額の保険金を受け取り、愛人と暮らすことができる。
最初は疑っていたマイロだが、計画が完璧であることを確信し提案を受け入れる。
計画は順調に進んだように思えたが───

熱量の高い芝居で一瞬も気が抜けません

幕が開いたらアンドリューはもうずっと、出ずっぱりなんですよね。
そしてマイロも一度出たらほぼ、引っ込まない。

60分間ずっと出ずっぱりのみならず、運動量は多いわ精神的に追い詰められるわでエライことなんですが、観てる時はそんなこと全く感じさせない。やはりプロ中のプロですよ。

最後までものすごい熱量なのですわ!

1幕は鋼太郎さんアンドリューの余裕綽々に翻弄され、2幕はカッキーマイロの意地の悪さにヒリヒリします。

てか男同士のマウンティング応酬って、女のそれより具体的なぶん、かなり残酷(笑)

女の身だと

「もうセックスできないだろ」って言われても
「ヤッてももう子ども作れねーし別にいいじゃん」って思っちゃうけど。
(いや・・・まだちょっと工夫すれば←聞かれてない

男性はそうはいかないらしい(翻訳物だからよけいに?)

 

アンドリューには男として下におかれた(と感じる)屈辱や、若さ・美貌に対する嫉妬が。

マイロにはイタリア系であることで、イギリスの階級社会で裕福になり得ない憤懣が。

それぞれ渦巻いていて、マウンティングし合ってるうちに

「実は女のことはどうでもよくなってるね?」

となってくる。あとはどっちが勝者かを決めることに熱中するというね。

 

あとね、ふたりとも自分のことをリアリストだと思ってるんだよね。

でも言ってることをじーっと聞いてると、ふたりとも地に足がついてない感じがする。

アンドリューは夢想家だから小説家になってるわけだし、マイロもカノジョの金遣いの荒さに気づいてるのに「愛さえあれば」的なふわっっとした夢を見てる。

結局アンドリューの妻はそういう男が好きってことじゃん、と感じてここもなんだか可笑しかった。

現代的でスタイリッシュ。古典なのに古くない

このお話自体、初演は1970年ってことでかなり古い。のですが、話の運びも登場人物の心情も、ぜんっぜん古くさくないのですよ~。

今回の舞台は特に、アンドリューのお家がスマートホーム(家電をインターネット回線でつなぎ、スマホで操作できるお家)だったり、執筆もパソコンを使用したりしてて、かなり現代的。

ふたりの衣装や家の中の調度品も、古めかしくなくてスタイリッシュ。

まるで2021年の今、起きた話のように感じられます。それだけに展開には手に汗握るよw

 

逆転に次ぐ逆転で、今はどっちが優位に立ってるの?この人の言うことは本当なの?って真剣に聞いてないと、置いて行かれそうになる。

観てる方も推理するというか、頭を使うので終演後は甘いものが激烈に欲しくなります(笑)

そういえば、探偵なんて登場しないのになんで題名が「スルース~探偵~」?しかもメジャーな言い方の「ディテクティブ」じゃないのはなぜ?

と思ってたんですが、sleuth には「謎解きが趣味な人」を指す意味もあるんだそうで。

そう聞くと、単なる女の取り合いでなく、お互いの優位性を争ってるうちに狂気をはらんでいく内容としっくりきて、「なるほど」って感じますね~。

こちらの説明が分かりやすかったです

なんせネタバレできない、てか全部を説明するのはとても難しいので、もやっとした感想を書いてますけどw

舞台(もしくは映画)を観てくれたら共感してもらえる点もあると思うの。だから観て←

華やかで重々しい鋼太郎さんと、チャラつきから突如牙を剥くカッキー

鋼太郎さんの華やかさについては今さら私ごときが言うことではありませんが、
「創作の才能で成功した富豪」がしっっくりとくる品の良さよ(ホレボレ

女性に甘そうなのもなんとなく・・・w

マイロを計画に引きずり込もうと説得する時、マイロを操ってあれこれ指示する時、そして本性を現し心情を吐き出す時。

声色の七変化が気持ちいいったらありゃしない!!( ゚∀゚ )ウハー

カッキー演じるマイロのやんちゃな色男ぶりも良かったわ~。野心はあるけどあれこれちょっとうまく行ってないイタリア男、ハマッてました。

計画を持ちかけられて承知し、言われるままに着替えたりしてるうちに楽しくなっちゃって
♪ルンルン になるとこ、陽気なイタリアーノって感じで

「だいじょうぶか?!」

ってなる(笑)

 

2幕、ある企みの種明かしをしてチョー嬉しそうな姿から、突如牙を剥くところも良かった!

カッキーって、低ーい冷たさからいきなりぶっ飛ぶ芝居の時が、個人的に一番刺激的で惹きつけられるのです。

この演目ではそれをたっぷり楽しめました。やれ嬉しや

しかし作品世界とは関係ない話ですが、カッキーがパンイチになってもセクシーさを感じないのは私に問題があるのでしょうか・・・w
どうも太陽属性には色気を感じない体質らしい(どうでもいい

 

ひとつネタバレしますが、1幕の終わり。

ピエロの衣装を着たマイロが、後ろ向きに階段から落ちるところがあり、ビックリ(⊙ˍ⊙)!!

毎公演あれをやってたら怪我するんじゃ、と思ったの。そしたらカーテンコールの時、ピエロの衣装を着た男性が出てらして、

「スタントだったのか!」

とまたビックリしたw

カッキーでなくてホッ。でもスタントの方も危険なことには変わりないですよね。怪我をなさいませんようにお祈りしております。

二転三転していくうちに、どちらのどの話が本当なのか分からなくなる展開で、お芝居が終わってからも反芻したくなります。

マイロがアンドリューの愛人について言ったことは、最終的な話が真実だったの?

本当に?

このゲーム(アンドリューはそう称してる)の勝者は?

後味がいいとは決して言えないのに、妙な爽快感のあるラストはクセになります。あーもう一回観たいなぁ

面白かった!

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