75分という短い上演時間だったけど、大満足しました。めっちゃ良かった!
作者のトム・ストッパード氏の作品は、井上芳雄さん出演の「アルカディア」を観てるのね
さては面白いに違いないと思ってましたが、ホントに面白かった!
あらすじ
舞台評論家のムーン(生田斗真さん)は、先輩劇評家のアシスタント扱いに不満を抱いている。
今日も、メイン評論家の代行として芝居を観にやってきた。
隣の席にはベテラン劇評家のバードブート(吉原光夫さん)。
彼は高評価をエサに、数々の女優に手を出しているらしい。今回もこの芝居に出演している若手女優を狙っている様子。
ふたりの思惑をよそに、舞台では芝居が始まる。人里離れた別荘を舞台にしたミステリーらしい。
『登場人物は屋敷の女主人シンシアと、友人フェリシティ、別荘の家政婦ドラッジ夫人、マグナス少佐、謎の男サイモン。三角関係のもつれで不穏な空気が満ちる別荘。ラジオからは脱走犯の逃走ニュースが流れる。別荘にハウンド警部と名乗る男が現れ、それぞれの疑心暗鬼が殺意を呼び─』
芝居は酷い出来だし、劇評家のふたりはそれぞれの邪念でいっぱいで気もそぞろ。しかし幕間になるといかにもそれらしい批評を述べ合う。
やがて芝居の幕間、劇中と同じく鳴り出した舞台上の電話に、バードブートが出てしまう。
なぜか電話は彼の妻からで、バードブートはそのまま劇中に取り込まれる。
さっきまで観ていた芝居そのままの台詞がやりとりされ、バードブートは劇の進行のまま撃たれてしまう。驚き舞台にあがったムーンもまた、劇中に取り込まれてしまい──
劇中劇の設定がほんとうに酷いのよ(笑)
池谷のぶえさんがあの説得力のあるエエ声で、いきなり状況説明セリフを朗々と言うところでもうダメだった(笑)
プロットはアガサの「ねずみとり」パロディ。
ラジオをつける度にタイミング良く臨時ニュースが流れたり、舞台上に死体があるのに誰も気づかなかったりw
カードゲームをしてるのに途中から麻雀用語になったりとかなりデタラメ。もう可笑しくて~
それを芝居力バツグンの役者さん達がやるんですよ。こんな贅沢あります?w
本筋である劇評家のおふたりもクセ者。
斗真さん悶々としてる役うまいよね。ヘンな表現ですが苛立ちが子どもっぽくない。
光夫さんは23階の笑いに続いて女たらしの役。なぜなのw似合うけど(をい
峯村リエさんが美しい夫人役でなんだか嬉しかった。パンフレットでご本人が「そこからコメディ」などとおっしゃってますがなんの。リエさんお美しいです。
一番謎だったのが謎の男サイモンの鈴木さん。謎を表現するのが巧すぎて謎(笑)
山崎一さんは出てきた瞬間からもう怪しいし(そしてオカシイ)。
趣里ちゃんもオーバーアクションがかわいいなーと油断して(?)観てたら、光夫さん演じるバードブートが舞台上にいて芝居が繰り返しになる時、さきほどと全く同じ芝居で。
一気に不条理感が増してゾワッとした。
劇評家であるバードブートは、フェリシティ役を演じてる女優(趣里ちゃんよ)を口説いてるぽい。
で、バードブートは前日の夜にあった、芝居ではない現実の出来事を話してるんだけど、それが奇妙に芝居内のやりとりと合致していく。
さっきまで客席で観ていた芝居の中に入り込んで、自分以外はすべてさっきまでの芝居をなぞってる。やりとりは破綻せず進んで行く。
このへんから急に怖いのよ!悪い夢を観てるような感覚になって、しかもさっきまでの芝居と展開が同じなら撃たれちゃう・・・と思ってるとまんま撃たれてしまう。
非常にシュール。でも魅力的なのよ!
バードブートが撃たれて、今度はムーンが舞台上にあがってきても芝居は進む。やはりやりとりは破綻しない。結局ムーンも撃たれて死んじゃう。
死ぬ間際、ムーンは自分を撃った男が、自分と同じように先輩の失脚を望んでいた後輩であると気づく。
うーーーん、どう書いても伝わる気がしない!!(笑)
すごく面白かったのです。わかって ←投げた
劇評家のふたりが、それぞれ思惑でいっぱいで芝居をちゃんと観てないのに、幕間になるといかにもそれらしい批評をこねくり回すのがヤな感じでいいの(笑)
劇中劇のこれでもかって酷いつくりも、作られた当時はそういう作品が上演されてるでしょっていう皮肉だったのかな。
そういう作品を芸達者な役者さん達が演じてみせる粋で大笑いできました。
不穏な空気が漂いつつ、安心して笑っていいんだなって思えてすごく楽しかった。
上演時間が短くてもギュッと濃密で、ホクホク♪
また上演されたら、ぜひ観たいです~
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