濱田めぐみさん海宝直人さん出演のミュージカル「アリージャンス~忠誠~」を観てきました。
まずね~この時代の日本人・日系人の身に起きてたことを知らなすぎますね私。
たまたまですけど、ドラマ化で話題になった有間しのぶさんの漫画「その女ジルバ」も読んでたところで。
(この漫画、表紙のイメージと、後半の展開にはかなりのギャップがある(笑)とてもイイのでぜひ読んで~
アリージャンスは戦争勃発時、その女ジルバは主に戦争が終わるころ。
どちらも夢と希望を持って海外へ渡り、大変な苦労をした日本人・日系人の方々(と、関わった人々)のお話です。
こんなことがあったなんて知らなかった、というのは、きっかけがないままなら、それでいいのかも知れません。
でもこうして一端を知ったなら、それについて研究とまではいかなくとも、起きたことを大まかに知っておくことは必要かなと考えてます。
日本は「大人が勉強しない国」だそうですけど
今後もそのままではいられないでしょうからね。
過去を知らずに未来を予測することは出来ませんから。
さてミュージカル「アリージャンス」。
濱田めぐみさん・海宝直人さんの歌声を堪能、あーんど中河内雅貴さんの華麗なダンスを楽しめるかな?!と考えて観に行きまして、期待通り満足して参りました。
濱めぐさんの思いっきり歌唱は久しぶりに聴いたな~気持ち良かったわ~!
海宝さんも前半と後半の変化がとても滑らかで、あれっこんなにお芝居がうまい人だったっけって思った(失礼)
中河内さんのダンスもちゃんと見せ場があって嬉しかった~
濱めぐさんもいるんでつい「スコット&ゼルダ」またやらないかな~と思ってしまいましたわ!
ミュージカル「生きる」でも活躍されていた役者さん達がたくさん出演してらして
(ホリプロだもんね)、なんだか身内のような気持ちで楽しんできましたわ。
あらすじ
2001年12月7日、80歳の退役軍人サム・キムラ(海宝直人さん・老人サム/上條恒彦さん)のもとに一人の女性が訪ねてきた。
遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイ(濱田めぐみさん)が亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇るー。
日系アメリカ人のキムラ家は、カリフォルニア州サリナスで平和に暮らしていた。
1941年12月7日に真珠湾攻撃が勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入し、日本の血をひく日系アメリカ人たちは敵性外国人扱いをされてしまう。
翌年8月にキムラ家は自宅から強制的に追い出され、収容所へと移送される。
日系の人々は厳しい収容所生活を送りながら日本人の精神にも通じる耐え忍ぶ“我慢”に想いを重ね希望を失わずに暮らしていた。
一方、ワシントンDCではマイク・マサオカ(今井朋彦さん)が日系人の社会的地位向上のためアメリカ軍との交渉に当たっていた。
ある日、収容所でアメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配られる。
一体どう答えるべきなのか、家族それぞれの考え方の違いが露わになる。
父タツオ(渡辺徹さん)は不当な強制収容に抵抗し、「No」を貫く。
姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキ(中河内雅貴さん)と共に強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。
弟のサミーは家族の反対を跳ね除けて、アメリカへの忠誠を示そうと軍に志願。
恋仲になった看護婦のハナ・キャンベル(小南満佑子さん)に家族を託し、日系人で構成された第442部隊の一員として戦場へと赴く。
己の信じる忠誠を胸に、戦時下を生き抜こうとした家族。その行く末はー
引用元:https://horipro-stage.jp/stage/allegiance2021/
ほとんどが強制収容所内のシーンで、セットといえば壁や柵(巨大)だけ。
日系人はそこで不自由な生活を強いられるわけですが、悲壮なのは序盤だけで、わりとあっけらかんと暮らしているように描かれてると感じました。
土埃が吹き込む場所で、トイレは複数並べられて隣との仕切りがなく丸見え。
収容所に到着したとたんに、男女をわけることもなく「身体検査をするから服を下着まで全部脱げ」と言われる。
アウシュビッツか?!と思うような扱いをされ、はじめのうちこそ泣き崩れたりするんですけど、日本人の美徳(?)「がまん」でもって順応する。
話が進んでいくと、そんな暮らしの中でも楽しみを見つけたりして、悲惨なことが次々起きながらも、どんよりと暗い気持ちになる感じじゃありませんでした。
そのぶん、気楽に観てられるってこともあるけど、逆にいえばしあわせが訪れても高揚しないというね。
全体的に静かに進んで行く舞台でした。
今井朋彦さん演じるマイク・マサオカが、日系人の社会的地位向上・人権を守るためにあれこれと提案する。
それをアメリカ側がことごとくひとひねりして、違うものにしてしまう。
ここの描写は、なんだか他人事とは思えず。
現代でも起きてますよね、こういうの。日米の関係ではなく国内で。
現場では知恵を絞って必死でやってても、上層に行くにつれて大切な点が変わってしまったり、台無しになってたり。
こういうことが起きないように、国民は政治を監視しなくちゃならないんですけどねぇ。
日本からアメリカに移住した日本人である一世にはアメリカ国民としての権利がなかった、というのも今回初めて知りました。
強制収容所へ送られるにあたって、すべての財産を失ったことも。
ううむ無知。
一世であるタツオは渡辺徹さん。頑固というか、意固地で愛情表現が下手くそな「日本のお父さん」がとてもハマッてました。
海宝くん演じるサムに「勉強して弁護士になれ」っていうのも、固い仕事に就いて堅実に、というやつよね。
しかしサムはもう、日本に行ったこともなくて完全にアメリカ人なんですよ、感性も思考も。
そりゃアメリカの文化の中でアメリカの教育を受けて育てばそうなるのも当然。
ただでさえ親は子どもの考えてることなんて理解できないのに、文化が違えば血のつながりがあったって異邦人ですよね。
そこが一世と二世以降の決定的な違い。家族としての愛情は別だけど、文化が違えばOSが違うわけだからね~。
日本から渡った一世の人たちは、日本人である自覚がありますよね。
だから日米間で戦争が起きれば排斥されるのは道理として受け止められるかもしれないけど、日本を見たこともない二世にとっては不条理な話。
自分はアメリカ人であるという認識から、サムのようにアメリカのために軍に入り忠誠を示す、と意気込むのもまぁ、分からなくもない。
でもそれって、なんとなく日本的な「滅私奉公の匂い」も感じてしまうのよね~ここ、なんか興味深かったわ。
個人的には、中河内雅貴さん演じるフランキーのように、「自身の権利を主張し待遇の改善を訴える」方が、まさにアメリカ人らしいなと思っちゃいますね。
家族はそれぞれの信念に対して忠誠を誓い、別々の道を歩む。
収容所で人権運動を行っていたケイとフランキー、アメリカへの無条件の忠誠をNOとしたタツオは生き延び、戦後は平穏な暮らしをしてる。
アメリカへの忠誠を示そうと従軍し、最前線で危険な任務を果たしてきたサムは、勲章はもらうけどぼろぼろで、愛した人も失ってしまう。
忠誠のあり方が自分とは正反対のフランキーと、姉のケイが結ばれていることにも耐えられなかったサムは、帰還しても家族と一緒には暮らさず、ケイが亡くなった知らせもスルーしようとするけど・・・
ラスト、始めにケイの訃報を知らせにきた婦人が、自分の姪であることが明かされる。
このラストで、お芝居全体が救いのある、あたたかなものになっていたと思います!
これが日本で作られたミュージカルでなく、本国アメリカで作られてるのが凄いなとしみじみ。
クリエイターの方々は日系人が主だったそうですけど、それでもオフでなくブロードウエイで上演されたというのが興味深いですよね。
アメリカの人々だって、こんなことが起きていたなんて知らない人が多いんじゃないのかな。
言わなきゃ知られない、いわば「自国がかつて行った正しくない行為」を含んだ話。
それを作りエンターテイメントとして上演することで、観た人に何かを知りたいと思わせることが上演の意義なら、少なくとも私にはとても効果的なものでした。
時間が出来たらこれを読もうと思ってる
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