新国立劇場で上演された、井上芳雄さん、和音美桜さん、シルビア・グラブさん出演のミュージカル「パッション」を観ました。
これ、当日まで劇場を勘違いしてて、あやうく違う劇場へ行っちゃうとこだったのよ(笑)
1度だけ、別の芝居を観に行くのに、パルコ劇場とシアターコクーン間違えたこともあって。
その時は「近くで良かった!!」って心の底から思いましたわ。確認だいじ。いやホントに。
で、劇場を勘違いしていたので席も間違って認識してまして、はじっこ席だと思ってたら2列目どセンターだったという、嬉しい誤算も。
と言ってもオーケストラピットが大きいので、2列目でも結構、ステージまでは距離があったけど。
さてパッションですが、感想はもう
「シルビアさんすごい。うまい。こわい」
がすべてでした(笑)お歌は皆さんすごくて、曲がとにかく難解で旋律が追えないんだけど、気持ちよーくすいすいと歌ってくださる。なので歌声にそのまま、身を任せてればいいやって感じになりました。
この作品は、1869年に出版された「フォスカ」という小説が元になってるそう。
イタリアの統一運動がモチーフでありながら、固定観念に縛られている世間に対して、異端を生きる人々が感じる怯え、みたいなものも見え隠れしてましたね。
あらすじを簡単に紹介すると、
シルビアさん演じるフォスカが、芳雄くん演じる美しい大尉ジョルジオを見初め、愛を求めてつきまとう。でもジョルジオは美桜さん演じる人妻クララと道ならぬ恋をしている。
これだけでも「なんかヤバげじゃない?」と感じると思いますが、はい正しい。ジョルジオは執拗なフォスカに、だんだん怯えるようになる。
フォスカは上官であるリッチ大佐の従姉妹であり、とても病弱で長生きできないと言われている。その状況もあって、最初は冷たくしきれないジョルジオだったが、フォスカのあまりのしつこさに、拒絶を露わにする。
しかし精神的な追い詰められたジョルジオの、ある行動をきっかけに、彼は真実の愛について考えるようになり・・・
1幕のフォスカはもう、不快のひとこと。叫び声で登場して、1幕終了時も、彼女の叫び声で終わる(怖)
でも2幕になると、彼女に対する印象がどんどん変わっていくのね。過去の出来事が分かってくるというのもあるし、フォスカが何を求めているのかが、ハッキリしてくるから。
彼女は「愛させてほしい」のね。そして自分はもう長く生きていけないだろうから、その間だけでも「愛されたと実感してみたい」のね。
愛すること、愛してもらうこと、安寧な生活を守ること。これらのバランスというか、優先順位のようなものが、登場人物それぞれの中に渦巻いてる。
つい、自分は誰に近いだろうか、と考えてしまったわ~。
幕が開いたら中央にベッド、こちらを向いた半裸の芳雄くんと、美しい背中を露わにした美桜さん。セクシーに始まるけど展開が怖いお話でした(笑)
パンフレットが表紙以外ぜんぶ白黒の印刷だったのも、私には新鮮でしたわ
曲がとにかく難解。でも何度も聴いてみたいと感じたのは、やっぱり出演者の皆さんの技巧によるものだと思う。とにかく美しい歌声で、聴いててホントに気持ちいい。自分がよく音を吸い込む布地かなにかになったような気分でした。
スカッとする話でもなく、重い気持ちになるけど、再演があればまた観たいです。
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