DDD青山クロスシアターで上演中の舞台「End of the RAINBOW」を観てきました。
この公演について初めて聞いたとき、私の愛する小西遼生さんが出演されるというので「観に行かなくちゃ!」と張り切ったんですが、劇場名に聞き覚えがない。
「どこ?」と思いつつ調べてみたら、客席が200席前後の小さな劇場だという。
「そんなところでこのメンバーで上演・・・チケット取れるのか?!」
と、まずそれが心配になったというね(笑)
2週間の期間中に19回の公演、しかも役柄をスイッチするというので、上演スケジュールとにらめっこしながら行ける日を選定。
というか正しくは行けない日を消去法で消していったんですけど。
そうして無事、行ける日のチケットは入手できまして、せっせと通いましたわ。
青山クロスシアターは青山劇場のすぐ近くにありました
今は閉館しちゃったけど、去年の夏(2014年8月)にはガラスの仮面を観るため通った青山劇場。遼生さんが速水真澄役で出演してたのよね~、今仲良くしてるお友だちとも、ここで知り合ったりしたっけなぁ。
などと懐かしく思いだしてみた(笑)
さてさて「End of the RAINBOW」はアメリカの往年の大スター、ジュディ・ガーランドの最晩年を描いた音楽劇です。
出演者はたった4人とピアノだけ。劇場のコンパクトさも相まって、その濃密な空気にクラクラしながら毎回観劇してますわ。
まずはあらすじを書きますが、毎度のながらネタバレ全開、私の主観入りまくりで書いていきます。
お話や演出を知りたくない~という方はご注意くださいね。
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舞台はホテルの一室。上手奥にはドレッサーと高い窓、手前にはテーブルとソファー。下手にはピアノと、バスルームの扉。
舞台を電飾で縁どりするように囲った枠は、パースが狂ったように平行でなく、上手の途中で壊れた風になっていました。
ロンドンのホテルのスイートルームに、男がひとり入ってくる。彼はジュディ・ガーランドのコンサートでピアノを弾くピアニスト、アンソニー(鈴木壮麻さん)。
部屋を見回し、ピアノを弾いてみると調律が済んでいるので驚いていると、足音が聞こえ、なぜかアンソニーはバスルームへ逃げ込んだ。
入って来たのは歌手ジュディ・ガーランド(彩吹真央さん)と彼女の年若い婚約者ミッキー・ディーンズ(伊礼彼方さん・小西遼生さん)。
入ってくるなり部屋が狭いと文句を言うジュディをいなすミッキー。ふたりになって楽しもうとしたところへ現れたアンソニーに驚きつつ、ジュディはこれから6週間にわたって行うコンサートでの復帰に、張り切っている様子を見せる。
ミッキーはクラブを経営していたがジュディのマネージャーになり、このコンサートでの彼女の復帰にかけている。
アンソニーはずっと前からジュディのピアニストとしてやってきたが、メルボルンでのコンサートの失敗から、ジュディの伴奏はしていなかった。
それぞれがコンサートへの期待とプレッシャーを感じながら、準備を進める。
ホテルへ到着して1週間後、リハーサルに現れないジュディの様子を見にアンソニーが部屋へ来ると、高層階にも関わらずジュディは窓辺に座り、酒を飲んでいた。
そこへホテルの支配人が電話をかけてくる。ジュディはホテルの代金を全く払っていなかった。
アンソニーやミッキーの「払ってこい」という勧めもきかず、支払いをしないことで当然トラブルになるが、ジュディは全く意に介さない。
鷹揚にかまえているように見えたジュディだが、コンサートの日が近づくにつれナーバスになり神経をとがらせていた。
ジュディは重度のアルコール依存症であり、薬物中毒だった。
ミッキーもアンソニーもジュディを酒と薬から引き離していたが、ジュディは薬を飲まずにパフォーマンスをすることに、たまらない恐怖心があった。
こっそり入手した薬を飲もうとするジュディを、アンソニーもミッキーも止める。自分で自分をコントロールするためには薬が必要、というジュディに、ミッキーはひとつだけ薬を与えてしまう。
コンサートは毎回盛況だった。ある日の夜、コンサートが終わってからジュディはミッキーの目を盗んで夜の街へ繰り出す。
薬物中毒のため挙動不審になりがちなジュディが、外で失態をさらさないかとミッキーは心配するが、ジュディはプレッシャーに耐えきれず、気を紛らわさなくてはいられなかった。
めちゃめちゃな自分をすべて受け止めて欲しいと訴えるジュディ。受け止めきれず、しかし「ジュディ・ガーランド」を諦めきれないミッキー。
ジュディの精神状態がギリギリの中、コンサートは続けられるが、とうとうある日、ジュディはステージを放り出してホテルへ帰ってしまう。
追ってきたミッキーはステージに戻れという。もう歌えない、コンサートは中止すると泣き崩れたジュディに、ミッキーは隠していた薬物を与える。
ジュディは破滅寸前だった。金銭的にも、精神的にも。このコンサートを中止する選択肢はなかったのだ。
それを見たアンソニーはミッキーを責め、ジュディにステージに戻らなくてもいい、どうしたいのかと聞く。ジュディの答えは「ステージに戻る」だった。
薬でハイになったジュディは圧倒的なパフォーマンスを見せるが、薬の作用で激しい不快感に苛まれていた。
様子を見に来たアンソニーは、ミッキーが退出すると、ジュディに「僕とおいで」と告げる。
アンソニーは、退屈でも穏やかで静かな暮らしをしようという。自分の時間はすべてジュディに捧げる。無償の愛で満たしてあげられる。ミッキーと結婚するのはやめて、自分と暮らそうという。
自然の中で穏やかに、何の重圧もない暮らしをあげる、というアンソニーと手を取り合っている時、ミッキーが戻ってくる。
ただならぬ雰囲気に「どうしたんだ」と尋ねるが問い詰めることはせず、ジュディの答えを待つミッキー。
ジュディの選択は、「アンソニーとさよならしていた」だった。
ミッキーを選び、ステージを選んだジュディは、6週間のコンサートをやり終えミッキーと結婚するが、その3か月後、薬物の過剰摂取で死んでしまう。
享年47歳だった。
ジュディ・ガーランドといえば私にとってはライザ・ミネリのお母さん。バイセクシャルで麻薬中毒だった、というのはなんとなく知ってましたが、その程度しか印象がなく、あまり興味もありませんでした。
「オズの魔法使い」はとっても有名だし、観た覚えはあるんですがあまり印象に残ってない。たぶん、その後に観たダイアナ・ロスの「ウィズ」があまりにも強烈だったせいだと思うんだけど(笑)
「スタア誕生」もバーブラ・ストライサンドが演じた方をよく覚えてます。これは年代的なものかしらね。
そのくらいの前知識しかなくても、お芝居を楽しむ分には構わないだろうけど、なんとなく知っておきたくて、ジュディ・ガーランドの人生をつづった本を読んでみた
図書館にあったんで借りて読んだけど・・・いやー壮絶(汗)
舞台に立つ一家に生まれ、才能があったために期待され、でもルックスがイケてなくて痩せるために薬を飲まされ、忙しくなったらバリバリ働けるようにまた薬を・・・と読んでるとだんだん暗い気持ちになりましたわ(悲)
劇中でも、薬でハイになってるからこそ、ものすごいパフォーマンスが出来るんだ、と本人が信じ込んでいるのがまた苦しい。
プロとして圧倒的なパフォーマンスで客を楽しませなきゃならない。今日は昨日よりも素晴らしいステージを!という強迫観念から逃れられないジュディと、薬なんかなくても出来ると考えている(少なくとも最初の頃は)ミッキーの乖離も見てて悲しくなってくる。
ミッキーは絶対に薬を飲ませまいとしてたのに、ジュディがショーから逃げ出したのを機に、むしろ積極的に飲ませるようになるのね。
飲ませないつもりなら薬を捨ててしまえば良かったのに、持ち歩いていたのは、経営していたクラブでさんざん薬物中毒の客を見てきたからなのかしら。
どうしても必要な時がくる、という予感があって持っていたのかなぁ。
ジュディ役の彩吹さんは初めて生のお芝居を観ましたけど、お歌といい表情・声色といい素晴らしいですね~。
あの細い身体で、しなやか~にお調子者らしく振る舞ってるかと思うと、瞬時に爆発するように叫んだり。アンソニーに「ぼくとおいで」と言われてさまざまに表情が変わるところ、本当に小さな劇場で観られて良かったと思いました。
ラリッておかしくなってるとこも、心情を吐露するとこも、何度も観てますがそのたび感情移入してしまい、苦しいったらない(涙)
そしてミッキーとイチャつくシーンが!あまりに色っぽい~。真央さんも可愛くて色っぽいし、彼方さんもセクシーで、ニヤつきながら観てしまう(笑)
だけどなんせ私ホラ、遼生狂いじゃないですか。(誰に言ってる)
薬を取り合ってるうちにイチャつきに変わってくシーンの、遼生さんの、こ、声が!(震)
声がですね、えっと、声・・・ダメだあの声・・・あの、あのシーンの声だけでも残して売りませんか?(真顔)
最初観た時、「えっ?えっ??」ってちょっと驚きながら観てましたが、しまいにはそのシーンが楽しみになっていたのはヒミツです。ってそんなの私のブログを読んでる方には先刻承知よね(笑)
アンソニーは実在の人物ではなく、ジュディを支えてきたピアニストたちをモデルにした架空の人物だそうですね。
無償の愛でジュディを支え、ジュディ・ガーランドでなく、ひとりの人間としての暮らしをしようというアンソニーの愛は、ゲイということもあって異性愛でなく慈愛に近いものなのかな。
その愛はまるで、教会が信者に与えるような愛みたい。すべてを赦し受け入れる、聖母のような愛だなぁと思いながら観てました。
でもその暮らしは、プレッシャーを感じることもない代わりに、誰にも何も期待されず、ただただ穏やかな、いわばホスピスのような暮らし。憧れではあってもジュディが欲しがる生活じゃなかった。
アンソニーは「僕が必要」っていうけど、必要なものと欲しいものって違うよね。
ミッキーにはお互いがいる暮らしがあればいいじゃない、と言ってはみるけど、そんなのは遠い憧れであって、本当に欲しいものではない。
「愛させて」とは言うけど、「愛してる」とは言わないアンソニーと、何かというと「愛してる」というミッキー。
うーん、私もアンソニーとは行かないかな・・・
何があっても立ち上がって歌い、喝采を浴びる事こそが、自分が生きている意味。ジュディはそう感じていたんじゃないだろうかと思いました。
ラスト、「不滅の存在になれたら、すべての埋め合わせができる」というジュディが愛しくてほんと泣けました。
↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑
彼方さん遼生さんはミッキー・ディーンズをダブルキャストで演じつつ、ミッキー役じゃない時はチョイ役で複数演じてます。
おふたりが演じるミッキーが違うのはもちろん、そのチョイ役も全然違うんで面白い(笑)
ミッキーの時はふたりともすっごいセクシーだし、野心ギラギラ。それは同じなのに、彼方さんと遼生さんで全然違うのが面白いですね~。
個人的には、彼方さんはとても自然で人間味を感じるミッキー、遼生さんはいかにも年増女が夢中になりそう(私か)な、魔性を感じるミッキーだと思いましたよん。
そしてこのお芝居、ジュディが歌う「Over the rainbow」で幕が閉じたら、劇場を出るとき泣き顔で辛くてたまらなかったと思うんですけど、フィナーレがとても楽しく贅沢なので救われました(笑)
ジュディ・ガーランドは「オズの魔法使い」のイメージから脱却を許されず、ずっと夢見る少女を演じさせられていたそうですが、そのイメージを払しょくし やっと大人になることを許されたのが「GET HAPPY」のパフォーマンスだったそうですね。
その「GET HAPPY」で終わるのがとても良かった~。黒ストッキングの足を大胆に出して、黒ジャケット、顔半分が隠れるようにかぶったハットで歌い踊る真央さんはすっごいカッコいい!
その後、皆さんがマイクを手にして再登場し、3曲をメドレーで歌ってくれるんですけど、それがとっても楽しいの~!
「この男性メンバーを集めておいて、歌わせないってどういうこと?!」
という不満も吹っ飛びました。ありがたや(拝)
東京公演はもう明日(9/3)で終わってしまいますが、来週9/9には大阪で公演があります。大阪は会場の大きさも違うので、また違って見えるのかしらね。
ウイットに富んだやり取りやら、艶っぽいシーンやらと、大人なお芝居で楽しみました~
***** 追記 *****
2016年に再演がありました!そちらの感想はコチラ
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