舞台「ダブリンの鐘つきカビ人間」を観てきました

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2015年10月3日から25日まで、渋谷のパルコ劇場で上演されていた「ダブリンの鐘つきカビ人間」を観てきました。

タイトルを聞いただけでは内容がまっったく想像がつかないこのお話、だいぶ以前に作られたそうですが面白い!

2002年版、2005年版はDVDで発売されておりまして、私は2005年版を持っております。

今回の上演には、私の愛する小西遼生さんが出演なさるというのを聞きまして。チケットを抑えると同時に

「どんな話か気になるわ~」

と思いましてですね、前回上演の2005年度版DVDをゲット。早速観てみたというわけです。

タイトルから全く内容が予想できなかった事に加えて、観てても展開が読めなくて、

「なんじゃこりゃ?!」

と思いつつ、大笑いして観た(笑)で、今回の上演も楽しみにしてたのよん。

さっそくあらすじですが、毎度ながらネタバレ全開で書きます。ので、お話を知りたくない方は読まないことをおすすめします~

 

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舞台は暗転の中、女性の歌声からの幕開け。

「る~ららる~♪ よろこ~びをう~たい♪ か~わはな~が~れ~る~」

までは良かったけど、そのあとシュールな歌詞に(笑)

おかしな歌を歌っていたのは真奈美(大塚千弘さん)。彼氏の聡(白洲迅さん)は、館にあった古びた剣を触っていた。

奔放な真奈美と、頼りない聡は見るからにうまくいってなさそう。ふたりは別れる前の最後の旅行の途中、森の中で霧にまかれ、老人の館に泊めてもらうことになり、くつろがせてもらっているところだった。

あまりのシュールな歌詞に歌を止めさせた聡だが、不機嫌な真奈美を持て余し、好きに歌えと促す。真奈美が歌い出したのは、霧の中で聞こえてきた歌だった。

「見たぞ 見たぞ かみにんぎょうが 見つけた ぼくらの教会 見つけた」

どんな意味があるんだろう?と真奈美が訝しんでいるところに、館の主人である老人が戻ってくる。老人は、今ではただの荒れ地になっているこの場所に、昔は町があった、自分はそこの市長だったと話し始める。

遠くから聞こえてきた鐘の音を合図に、真奈美と聡は老人が話す、不思議な世界に入り込んでしまう。

 

そこは、ひとりひとりが違う症状に悩まされる、という奇病が蔓延している「市」。

どうしても指に鳥が止まる者、目が異常に良くなり何kmも先のものが目前に見える者、実際の年齢よりもずっと外見が老けてしまう者など、市民の9割が病気に罹っていた。

国王までもがこの病に罹っており、困り果てた王は、千人斬ると奇跡を起こすという剣(ポーグマホーン)を探しに行く者を募る。

しかし奇病を国内に広めることを防ぐため、王は市を封鎖し、誰も出られないように怪獣を放していた。それを恐れた市民は誰も行こうとしない。

そのやりとりを見ていた真奈美は、自分が剣を探してこようと名乗りをあげる。

王(後藤ひろひとさん)と侍従長(マギーさん)、市民たちが真奈美たちを送りだそうとするが、市長(吉野圭吾さん)が止めに入る。

市長は真奈美たちの税金の未納を責め、逮捕しようとするが侍従長に制止される。

侍従長に武器を託され、送り出された真奈美と聡は奇跡の剣を探しに森へ出て行く。

入れ替わりに現れたのは、醜い「カビ人間(佐藤隆太さん)」だった。カビ人間はお昼10分前に鐘を突くのを生業にしている。醜い姿は奇病の症状だった。

病気に罹る前は、輝くばかりの美貌を武器に、あらん限りの悪事を働く悪党だった。奇病により外見と性根が入れ替わり、性根は水晶のように美しく、外見はカビ雑巾のように醜くなっていた。

本人には以前の記憶はないらしいが、市民たちは病気に罹る前の彼の悪行を覚えている。現在の醜い姿に加え、以前の悪党ぶりを知っている市民たちは、カビ人間を忌み嫌っていた。

 

ある日、カビ人間は四ツ葉のクローバーを探している娘・おさえ(上西星来さん)に出会う。親切に紳士的に振る舞うカビ人間だが、おさえは他の市民同様、醜い姿に怯えて逃げ出す。

おさえも病気に罹っていた。思っている事と逆の事しか言えないのだ。

おさえの婚約者の戦士(小西遼生さん)は知らない名前がどんどん口をついて出てくる症状に、父親(村井国夫さん)は実際の年齢よりもずっと老けた外見になってしまう症状に悩まされていた。

戦士がおさえの家を訪れていた時、教会のシスター(笹井英介さん)が現れる。真奈美たちを邪教団の使者であると言い、奇跡の剣を渡してはいけない、先に手に入れるのだと戦士を説得する。シスターの話を信じた戦士は、真奈美たちを追って森へ行く。

ところがシスターは、市長とグルになった悪人だった。市長は市民に「病税」として税を徴収していた。奇跡が起こり病気が治ってしまっては税金が取れない。

あわよくば奇跡の剣は私欲のために使いたい市長が、シスターに嘘を言わせたのだ。

そうとは知らない真奈美・聡と戦士は、それぞれ森での戦いに勝利し、着々と奇跡の剣に近づいていた。

一方で、おさえが思った事と逆のことしか言えない病気と知らないカビ人間は、ひょんなことから おさえに褒められたと思い込み、自分を受け入れてくれると喜んでいた。

おさえは自分の病気に苛立ち、自宅の鉢植えを2階から投げ落とすが、あろうことか鉢植えは、見舞いに来ていた侍従長の頭に当たってしまう。それが原因で侍従長は狂ってしまった。

犯人を捜すため、賞金を出すというおふれに惹かれて、市民たちが我先にと証言をし始めたとき、「自分がやった」と名乗り出たのはカビ人間だった。

 

カビ人間が自分をかばったことで、おさえは少しずつ、カビ人間の中身に触れ、その内面に惹かれるようになる。

一方、森の中で真奈美たちを見つけた戦士は戦いを挑むが、剣を交えるうちに、真奈美が邪教団のものとは思えないと感じる。

真奈美と話し、シスターの話が嘘だったと分かった戦士は、怒りに震え町に戻ろうとするが、出口のない森に幻惑され出られない。困り果てた真奈美・聡と戦士の前に、森の司会者が現れる。

司会者は3人をゲームに誘う。ゲームに勝てば景品として、ポーグマホーンをくれるという。ゲームは簡単なものではなかったが、聡の思いがけない活躍によって勝利し、3人は剣を手にすることが出来た。

 

同じころ、市長はシスターの占いによって、自分も奇病に罹ったことを知る。他の市民はおかしな症状に悩まされているものの、命に別状はないのに、自分は命を落とすというのだ。

そのきっかけになるのが、クリスマスの翌日であるセント・スティーブンズデイに、カビ人間が突く「正午10分前の鐘」。お告げを聞いた市長は、なんとか鐘を突かせまいとカビ人間を説得しようとするが、カビ人間は聞き入れない。

そこで市長はとんでもない策を考えた。シスターに協力させて教会に火を放ち、市民のひとりを抱き込んで「カビ人間が火をつけた」と流言させたのだ。

「見たぞ 見たぞ カビ人間が火つけた ぼくらの教会 火つけた」

真奈美と聡が霧の中で聞いたのは、この歌だった。市民が勘違いでカビ人間を処刑しようとしている、と気づいた真奈美と聡は必死に止めるが、市民たちに彼らの姿は見えない。

 

カビ人間を処刑させまいと、おさえも必死で彼を匿おうとする。しかしカビ人間は、鐘を突くのが自分の仕事だといい、武装した市民たちの前に出ていく。

悲しみにくれるおさえの元に、ポーグマホーンを手にした戦士が戻ってくる。戦士は剣を奪いに来たシスターと手下どもを倒し、あと1人斬れば奇跡が起こる、というところまで来る。おさえは負傷した戦士からポーグマホーンを奪い、カビ人間のいる鐘つき堂へ急ぐ。

カビ人間は市民たちが殺気を放つ中、仕事を全うしようと鐘つき堂へ登っていた。そこへポーグマホーンを手にしたおさえが現れるが、彼女は思った事と逆の事しか言えない。

「彼を殺して」

というおさえの言葉に反応し、錯乱したままの侍従長が、カビ人間を撃ち殺してしまう。おさえはカビ人間への想いと称賛を、逆の言葉で独白し剣で自らの命を絶つ。

おさえの命によって千人斬りを果たしたポーグマホーンは奇跡を起こし、市民の奇病はすべて完治する。

 

関わりを持ったのにカビ人間を救うことが出来ず、悲しみにくれる真奈美を、聡が慰める。別れる寸前だった彼らは、この出来事をきっかけに、またやり直せたのかもしれない。

しかし真奈美たちを館へ迎えた老人は、ポーグマホーンの奇跡によって、死を免れたどころか、死ぬことが出来なくなった市長だった。

市長は次の奇跡で死ぬことを願い、森へ迷い込んだ人々を斬り殺していたのだった。真奈美と聡も命を奪われ、後には霧の中の館でただひとり、市長だった男だけが残った。

 

なげーよ、あらすじ(笑)

こうして書いてみると、改めて良く出来た話なんだなーと思っちゃうわね。話を端折ると、何のことやらさっぱり分かんなくなるし。

でも観た方はお分かりかと思いますが、これでも、省いてることがたくさんあるのよ~。なんせ見どころが多くて書ききれないわ(笑)

初めて観た時は結末に驚いた!真奈美と聡は、よりが戻るとばかり思ったから。殺されてしまうとは・・・。実は森に迷い込んだ時から、命は無かったのかもしれないわね。

 

それにしても、楽しい展開の中にところどころ見えかくれする毒は、本当に私 大好きだ~!

おさえが思った事と逆の事しか言えないのは、市民のうちの何人かは知ってると思うんだけど、「火をつけたのはカビ人間よ!」という彼女の言葉を「逆なの?」と考える人はいない。

人は、人の言葉を都合の良いようにしか受け取らない、という暗喩にも思えるね。

カビ人間が頑なに「鐘を突くのが自分の仕事だから」と、誤解で殺されそうになっていても鐘つき堂へ向かうのは、「存在意義を失くしたら、自分は死んだも同然」ってことなのかと思う。

その前の、おさえの父親との会話で、どうやら自分は、奇病に罹る前は相当酷いことをしてきたらしい、と薄々感じることも、死に向かうことと無関係ではないように思えるし。

町中の人に嫌われ疎まれていても、仕事があるから存在していられる。自分の鐘は町の人の、昼食という安らぎに役立っている。そう信じたい気持ちが 彼を支えてきたんだろうなぁと思うと、泣けて泣けて(涙)

 

奇病を免れ、分別と慈愛に満ちていた侍従長が、病ではなく おさえの投げ捨てた鉢によって狂うのも皮肉。

奇跡が起きて町のみんなが健常に戻っても、侍従長は狂ったままなんだよね。そこにも、作者の毒の含みがあるように思えてならないわ。

のっけから不気味な雰囲気を残しつつ、ほとんど大笑いで進む展開の中、お話の根底に横たわる毒気に惹きつけられるのかなと感じる。

そうそうあとね、妙に色気を感じるシーンがあるのも好きなの~(喜)

おさえが醜いカビ人間に怯えて、(こっちに来ないで!!私に触れないで!!)と思ってるのに、逆の事しか言えないから「来て」「さわって」になるのも色っぽいし、シスターと市長もデキてるし。

シスターと市長はデキてるというか、お互い打算づくなんだろうけど(笑)

ラスト、自分をポーグマホーンで刺し貫くおさえが言う

「奇跡なんてくそくらえ!!」

というセリフ。逆の事しか言えない彼女だから、「奇跡よ起きて、お願い」ってことなのか?でもその表情は、本当に「奇跡がナンボのもんじゃ!!」って言ってるみたい。

彼女は何かを望んだのか、それとも望みを絶ったのか。そんな事も考えちゃうお話でした。

↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑

 

スリルとアクション、笑いと恋、そして怖さ。面白いと感じる要素がたくさん詰まってるんだもん、そりゃ楽しいよ~大好き!

個人的には、遼生さん演じる戦士の見せ場が多いのも、すんごい嬉しい~。殺陣はもう文句なしにカッコイイっす。惚れ直すっす。好きに底はない、ってのを実感してるっす(痛)

強いんだけど武力バカ、そして女の子にアマアマ。って役は初めてみた。ハマるわ(笑)

「うまー!」

っていい声で馬を呼んだあとの、

「どうです、私の愛馬は」

的なドヤ顔とか、おさえちゃんに愛のことばを求めるデレデレ具合とか、これから戦いに身を投じる!って時の、よだれを垂らさんばかりの嬉しそうな顔とか、もうもう書ききれない・・・!

ごちそうさまでした(満足)

 

クセの強い登場人物が山ほどいる中、主演の佐藤隆太さんはサラッとしてるなぁという印象。でも、あのピュアながら芯の強さを感じるカビ人間って、実はそうそう出来る人は いないのかも。

周りの人が濃ければ濃いほど、カビ人間とおさえの純粋な気持ちが引き立つのよね、きっと。

おさえ役の星来ちゃんは、配役を聞いた時は「19歳かー若いなー、どうだろ難しいんじゃない?」と思いましたが、良かった!

思いと表情はリンクするけど言葉は逆、って難しいよねぇ。なんせ可愛らしくて、アクの強い人々の中、頑張ったね~。日に日に良くなってて、お母さん何度も泣かされたわよ(涙)

笹井さん村井さんはさすがの説得力だし、吉野さんの市長は観るたび濃さが増してて

「なんて悪役の似合う人なんだ・・・!」※褒めてます

って大好きになったし。マギーさん後藤さんは毎回「何を言い出すのかしら・・・」ってワクワクさせてくれるし(笑)

真奈美役の千弘ちゃんもすっごい自然体で、真奈美の憎めない自分勝手さが際立って可愛らしい。皆さん忙しく何役もこなされて、早替えだけでなく殺陣もあるしダンス(だよねあれ)もあるし、本当に大変だと思います。でも楽しんで演じられているように見えましたよん。

 

あまりの面白さに息子(小4)を2回連れて行ったけど、全然飽きずに大笑いして観てました。含んだ毒もあるけれど、子どもも楽しめるお芝居で嬉しかったなぁ。

DVDが後から発売されるそう。劇場で予約したので、それが届くのも楽しみ。

2015年版ダブリンの鐘つきカビ人間は、東京・福岡・広島での公演は終了。

今週末(2015年11月13日~15日)は大阪で公演、その後仙台公演(2015年11月17日)を経て大千秋楽は札幌(2015年11月20日)です。

わたくしも、大阪と札幌には出没する予定よん。

公演によってはまだチケットもあるようですから、迷ってらしたらぜひ観に行ってね。って回し者か(笑)

と、いうわけで「ダブリンの鐘つきカビ人間2015」は、とっても楽しめた!って話でした~

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