宮部氏が好きで、繰り返し読む作品が多い中でも、これは春になると必ず読みたくなります。
回向院の旦那と呼ばれる、本所深川一帯を取り仕切る茂七親分の活躍を描いたこの作品。
宮部氏特有の、「超人でない、まっとうな感覚をもった正義感あふれる人」が主人公。
その心の動きや、かみさんや子分とのやりとりに心がほっこりとします。
宮部氏のすごいところは、普通の人たちがわんさかと出てくるのに話が普通で終わらず、実にトリッキーなところ。
ミステリとして秀逸なのは言うまでもありません。
しかし、春になるとこれを読みたくなるのはなぜなのかしら。
それは多分、この連作が冬の終わりから始まって、春、花見の季節を迎えるまでが描かれているからなんでしょうね。
一作ごとに出てくる、おいしそうな料理の数々。しかもその料理を作るのが、これまた正体不明の屋台の親父。
元はお武家様、しかも相当の地位にあったらしい。そして料理の腕も天下一品ときて、これが興味をそそらないわけがない。
少しずつ、少ぅしずつその正体が見え隠れするあたり、さすが宮部氏!なんとも言えず焦らされます(笑)
話が途中で止まっている状態のこの連作、文庫版のあとがきに、「必ず続きを書きます」と書かれていましたが、切に続きが読みたいです。
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