舞台「藪原検校」2021年版を観てきました

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市川猿之助さん主演、杉原邦生さん演出の舞台「藪原検校」を観てきました。

井上ひさし氏作のこの芝居、エログロ的要素も多いのですがわたくし無性に好きでして。

以前観た、野村萬斎さん主演Ver.の感想記事はコチラ

あらすじは上記の感想記事に書いたのと同じ。

しかし演出家も出演者も違うので、まったく違う味わいの舞台になっておりました!

舞台美術は渋谷を思わせる街角。

江戸中期のお話なのに渋谷っぽい・・・とちょっと不思議な感じ。

しかし今回の盲太夫、川平慈英さんが語り始めるとこれがハマるので感心することしきりです!

よたよたと出てきたかと思うと床に錫杖を打ち下ろすかのようにカーン!と杖をつく。

照明がすべて落ちて盲太夫だけにスポットがあたる、このオープニングかっこよかったわ~。

そういえば盲太夫、山西惇さんを大好きになったキッカケだったなぁ~と懐かしく思いだしてみたり。

膨大な台詞(というより語り)が続く盲太夫は、誰にでもできる役じゃないですよね。

慈英さんの盲太夫はスタイリッシュで外連味があり、すごくカッコ良かったです。

もうひとつそういえば。この「藪原検校」は、PARCO劇場の前身・西武劇場のオープニング記念作品だったんだそうですね。

それの演目をリニューアルしたPARCO劇場で上演する、っていうのもなんだかイイじゃありませんか。

さて今回の「藪原検校」で印象的だったのは三宅健さん演じる塙保己市。

若すぎない?っていうのが最初の印象でしたが、観ているとなんとなく「とびきり賢い人格者」からちょっとはみ出す悪意のようなものが。

それが若い外見と相まって、杉の市とは違った保己市のねじれを表してるようで、すごく良かった。

ヒップホップを歌い出した時はどうしようかと思ったけどw

松雪泰子さんのお市は色っぽいのは当然として、けっこうなコメディエンヌですよね(笑)

もう間がサイコーなのw

そして終盤はすっごい怖い。声色がこの世のモノでないようで、ゾッとしましたわ。

もうひとりツボだったのが佐藤誓さん。誓さん3回も殺されるんだけど、3回とも同じポーズで絶命するの(笑)

私、誓さんも声がとても好きなんですよー。色気がありますよね。

あと、松永玲子さんも色んな役をされてたんですが、強請られる奥さんがすっごい面白かった~

大ラスト、主演の市川猿之助さんが首切り役人として歌舞伎らしい出で立ちで現れたのにはちょっと驚きました。

杉の市(の人形)をバッサと三段斬りにするんですが、斬られた腰から下が、けっこうな重量を思わせる音でどすんと落ちる。

怖いよ!!

そして処刑前に食わされた末期蕎麦(まつごそば)が だらりと垂れ下がるぞ・・・と知っている身としては、うわーこのリアルな人形であれを観るの・・・ってちょっと身構えた。

予想以上にリアルな造形で、ちょっとしばらく蕎麦は食べられないかもと思ったしw

それにしても猿之助さんの太刀筋はすごく美しく力強くて、そこはもうさすがという感じ。

さすがといえば、物語序盤に杉の市が「語りの名手」であることを見せる「早物語」のシーンがあるんですけどね。

猿之助さんの早物語は、まるで落語のようでした。猛スピードで語る物語を聞き逃すまいと必死で聞いたわ!

ポップなところや笑いどころを置きつつ、
「こいつが悪の手でのし上がろうとしたことを責められるか」と問われた気分になる。

盲人になりたくてなったわけでなし、この人たちにも幸福を追求する権利はあるわけで。

やり方は認められるものではないけど、生きることに強く執着する杉の市は痛快ですらありました。

藪原検校は再演されるたびに観に行っちゃうと思うな~。次は誰がやるでしょね。

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