2021年になりました~このブログも14年目でございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
さて。
もう昨年の話ですが、
東山紀之さん・谷原章介さん出演、宮本亜門さん演出の舞台「チョコレートドーナツ」を見てきました。
まずは印象的だったのが美術セットの「リカちゃんハウス感」。
よくできたリアルなおもちゃみたいな質感だったのよね。
個人的には、あのセットが物語全体の寓話感を強めていたように思いましたよ。
あらすじ
ふたりはたちまち恋に落ちるが、ポールはゲイであることを周囲に隠していた。ある日、ルディのアパートの隣室に住む女(まりゑさん)が薬物で逮捕される。その部屋には、ダウン症の少年マルコ(高橋永さん・丹下開登さん)が置き去りにされていた。
少年をどうしても施設に送りたくないというルディに根負けし、ポールはルディとマルコを自宅へ連れ帰る。
ゲイカップルであることを隠し、いとこ同士だとしてマルコを引き取ったのだ。
ポールは自宅に子ども部屋を作り、生活環境を整えるためルディも奮闘する。
まるで本当の家族のように、3人はお互いを愛し、幸福に暮らした。
ある日、ポールの上司宅でのハロウィンパーティで、ポールとルディがゲイのカップルであることが周囲に知られてしまう。
いとこではなくゲイカップルだったことで、マルコは家庭局に連れて行かれ、ポールは仕事を辞めることになった。
最初は絶望したふたりだったが、差別と偏見により奪われたマルコを取り戻すために裁判に挑む。
ふたりの真摯な態度が受け入れられ、周囲の偏見は覆されたように見えたが───
70年代のお話ってことで、劇中ではゲイに対して激烈なディスりが繰り広げられるのではないかと心配(?)したけど、そんなことはなかったよホッ。
大昔はね、同性愛はフリーキーなものとして扱われていたって事実がありますが。
今や同性婚も認められるべきという認識も、少しずつですが拡がってるしね。
現代の見る側の認識と、70年代当時の「普通」が合致していない場合、このへんのバランスは難しかったでしょうに、見事でした。
映画なら表現世界すべてを70年代に作ることができるけど、舞台は難しいよね~ナマだしさ。
あとね、実際にダウン症の子を起用して、ダウン症を悪く言う台詞を浴びさせるのはヒヤッとしたけど、ここもバランスが良かった。
現実には、悪口よりも善意のつもりの何かの方が、よっぽど意地が悪いんだけどね。このお話の着地点も結局そういうことだし。
大多数と違うことは「隠すべき悪いこと」なのか
高畑淳子さん演じる判事さんも、大西多摩恵さん演じる施設の先生も、ルディとポールの人格やマルコへの愛を理解してる。
マルコが育つ環境として、施設よりもずっと良いと認めつつ、最終的には
「ゲイであることを隠さない大人に育つ可能性がある」(なにそれ)
ってことで引き離される。
ここは「はぁー?!えーーー?」となるよ!
巧いのは、この判決がどれだけ理不尽で無意味に人の愛と尊厳を打ち砕くものかが、効果的に見えるように、それまでの幸せな関係をじっくり描いているところ。
素晴らしかったわ~。
誰もイジワルしようとしていない(ポールの上司は別)、それでも普通じゃないことはイコール悪影響だと断定される気味の悪さ。
なんせこの舞台、バランスの良さがとてもとても印象的でね!
原作映画にしろ、今回の舞台にしろ、オススメするのに「泣いた」「泣けた」「号泣」ってばかり連呼してるのが目について、そうなると観る前からちょっと興ざめ的なとこがあるんですが。
この舞台はテンポが良くて。差別や偏見で胸が詰まるところはあれど、むしろ泣かせまいとしてる?と感じるくらい。
同情したり可哀想がるんじゃなくて、問題はどこにあるのか、どうしてこれが起きるのか考えなさいよと囁かれているようでした。
キャストさんたちがもう、魅力的でした~!
谷原さんを舞台で観たのは初めてでしたが、すごく響く声ですね~。正義感に溢れ、品があり純粋で可愛いポールでした。
ルディのストレートさにおどおどする事が多いんだけど、いちいち可愛い(笑)
理不尽さに怒り、自分はなぜ法律家になったのかと情熱を取り戻すシーンは胸が熱くなりました。
東山さんはもう、まず身体がスゴイ(そこか
ほっそいのに腕とか凄くて・・・あの筋肉つけるのに何年かかってるのかしら。
(筋トレするやつは考えがち
ドレスの時はともかく、半裸のボンテージ姿で出てこられた時は
どこ見てたらいいのコレってなったw
ルディは教養は無いけど、キッチリと筋が通ってて、何も恥じることはないと誇りをもって生きてる人。愛を注ぐことで自分が満たされることを知っている、優しく強い人でした。
東山さんがあんなに色んな声色を使える人とは知らなかったので、ちょっと驚いた。
そして歌うとギュッとこちらの意識を引き寄せる。彼の歌にチカラがあることで、店での口パクショーの空虚さ・刹那さが浮きあがります。
ここに居たくているわけじゃない。やりたいことはあるけど、現状ここに居るしかない。
こんなに歌えるのに、誰も彼の歌を聴こうとしない──
そのことは、彼自身が素晴らしい心根を持っていてもゲイだというだけで正当に評価されないこととリンクするように感じました。
高畑淳子さんはすんごいイイ声で、高潔な判事像がピッタリ。カーテンコールでは飛び跳ねてて可愛かったわ~
そしてマルコのダメママと、幸福な暮らしを象徴するかのような歌姫を演じたまりゑちゃん!
もうね!大好き!!
ダメママのクズっぶりもいいし、歌姫の堂々たる歌声も素晴らしかったです。
マルコ役は、私が観た回は高橋永くんでした。カーテンコールで何度も投げキッスしてたなぁ。天使か。
東京公演・上田公演は終わったところかな。これから仙台・大阪・愛知と地方公演が続く予定ですね。
緊急事態宣言も各地で出てますが、機会があればぜひ。もちろん対策の上でね~。
いかにも泣かせようって場面はないけど、カーテンコールでしみじみと泣いちゃった演目でした。
どんな身体に生まれても、どんな生き方を選んでも、誰だってちゃんと生きて笑ったり泣いたりする権利があることを忘れないでいたいものです。
フラットに生きたい。難しいけどね。
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