山口祐一郎さんをはじめ、錚々たるメンバーが揃ったミュージカル「貴婦人の訪問」。
私の家からとっても行きやすい、北千住の劇場「シアター1010」で観ました。
皮肉で後味も悪いのに、なんだか笑ってしまう作品で、何より歌が!お歌がすごくてシビれたわ~。
舞台は地方の小都市・ギュレン。アルフレッド(山口祐一郎さん)・マチルデ(春野寿美礼さん)夫妻はその町で雑貨店を営んでいる。
ギュレンは最近、主要産業であった工場が閉鎖されてしまい、経済破綻寸前の状態。そんなところへ、かつてこの土地で暮らしていたクレア(涼風真世さん)が、数十年ぶりに帰ってくるという。
クレアは大富豪の未亡人で、とんでもないお金持ち。ギュレンの人々は、クレアに経済的な援助を期待し盛大に歓迎する。
黒豹と、いかついボディガードを2人も連れたクレアは、決して友好的な態度ではなかったが、ある条件と引き換えに、町の人々が期待した以上の援助を約束する。
その条件とは、かつて自分を裏切ったアルフレッドが死ぬことだった。
はじめはとんでもないことだ、と拒絶反応を見せた町の人々だったが、少しずつアルフレッドの死を望むようになり・・・
と、いうお話。怖いコワイ(笑)
町の人々の衣装が、だんだんきらびやかに変化していったり、家族や友人までもがアルフレッドの死を望むように変化していくのが、なんとも薄気味悪い。
クレアは「アルフレッドを殺して」とは言わないし、誰も命を狙って行動を起こしたりはしない。
でも何か起きないか、もっといえば
「アルフレッドが自殺しないかな」
という期待が、町の人々の間に高まっていくのが怖かったわ~。
最後まで理性を失わず、みすぼらしい身なりのままだったクラウス(石川禅さん)が、多勢に無勢でねじ伏せられていくように変わってしまうのも哀しかったなぁ。
お話の作りは粗いというか、ところどころ説明不足と感じたところもあるのね。アルフレッドとマチルデの子どもたちは、最初っから拝金主義的で親の命なんて何とも思ってないみたいだし。
腑に落ちないなーと感じるところがあるので、物語がきちんと出来上がってないとイヤ!という方には不満かも。
個の幸せよりも全体の満足を優先するのが正義だという欺瞞とか、人生のチャンスを逃したくないと焦る卑しさ、みたいなのが皮肉とブラックユーモアで彩られてて、私は好きでしたね。
皆さまの歌声とダンスがもうもう素晴らしくてね。特に涼風さんが!
あのか細い身体なのに。とんでもないパワフルな歌声を聴かせてもらったわ~私たぶん、口をぽかんと開けて聴いてたと思う(笑)
歌い上げるナンバーが少なかったせいか、この時の祐一郎さんは今ひとつだったように感じましたね。
貴婦人の訪問も、2016年に再演が決まっているので楽しみです!
コメント