町之介慕情 後家長屋 官能小説ではあるが

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もとは武士だったが、ある理由で武士を捨て貸本屋を営む主人公・町之介。大阪のおおらかな女たちとの交わりや、貸本屋商売の構造、江戸時代の大阪の風俗が描かれた作品。

作者の阿部牧郎氏は1988年に「それぞれの終楽章」という作品で直木賞を取った方。

それ以前から、官能小説を多数書いてる方でもあります。

OL・人妻ものも多く書いてますが、私が気に入ってるのは江戸時代の大阪を舞台にした一連の作品。

もともと江戸物がとても好きでよく読むんだけど、大阪を舞台にしたものは珍しい。

しかも官能物でもある。

この作品が面白いのは、当時のさまざまな商売のありかたが詳しく描かれている点ですね。

主人公の町之介は貸本屋だけど、つきあうことになる女性達の婚家やら勤め先やらの商売の説明などが詳しく描かれていて興味深い。

さすが、商売の町・大阪を舞台に選んだだけのことはあるね!

どこへ行っても主人公の町之介がモテモテなのは、さすがに「都合よすぎ」だけど、みかけは優しげな色男で、元武士なもんで腕っ節は強い。

武士を捨て貸本屋になっているけど、それも大きな目的があってのこと。ま、モテるでしょうね。

そして出てくる女達もくせ者(?)ぞろい。私が一番好きなのは「お照さん」。文庫の題名にもなってる「後家長屋」に出てくる未亡人だけど、割り切れててオトナで、とってもイイ女だぞ。

性描写は、全体の1/10くらい?のもん。恋愛小説でもそうだけど、結ばれるまでのプロセスが大事よね。

町之介からコナかけるのは少数で、女達に誘われる場合が多いのは、官能小説の宿命というものでしょうか。

官能小説好きだけでなく、「物語読み」の目にも充分耐える小説です。

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